2006年5月14日掲載記事

会いたい・聞きたい:NPO全国精神障害者ネットワーク協議会・徳山大英さん/熊本

 ◇「生きる意欲」へ支援続ける−−NPO全国精神障害者ネットワーク協議会代表・徳山大英さん(48)
 一生の間に10人に1人以上がうつ病にかかり、100人に1人が統合失調症を発症すると言われる。さまざまな「心の病」を患う人が近年増えている。徳山大英さんが統合失調症を発症したのは1978年。入退院や自殺未遂をくり返した後、94年に「仲間会りんどう」を結成。以来、精神障害者として、当事者のための支援活動を続けてきた。徳山さんに精神障害者をめぐる状況についてなどを聞いた。【伊藤奈々恵】
 ――発病の引き金は。
 ◆大学入試で2浪し、不眠症になりました。自分を救世主と思う妄想が始まり、錯乱が続きました。病気を受け入れるのに10年かかりました。自殺未遂を4〜5回しましたが、最後の自殺未遂で、自分は病者と受け入れました。
 ――なぜ自殺未遂。
 ◆生活苦ですよ。病気を抱えて働くのは大変です。警備員、パチンコ屋店員、印刷会社、事務員、測量……。数え切れないほどの仕事に就きました。今は、生活保護を受けてます。
 「仲間会りんどう」の活動を始めたのはそれからです。仲間3人で海水浴や温泉旅行などを始めました。まわりの人に精神病と言えないけど、仲間同士なら安心できる。5年ほど前にピアカウンセリングも始めました。
 ――それは何ですか。
 ◆仲間同士、同じ立場でのカウンセリングです。時間とテーマを決めて、話す訓練をします。話すことを否定され、自信をなくし、言葉を失っている人が多いんです。言葉を使えることは社会生活へのステップになるでしょう。
 ――精神障害者をめぐる環境の変化を感じますか。
 ◆理解者も増えていますが、差別的な行動も増えています。お金も場所も医者も足りず、患者だけ増えている。社会に復帰するための施設はほとんどなく、予算も削られる。市内の作業所をNPO法人にしようとしてます。そうしないと生き残れない。社会が窮屈になっている気がします。
 ――どんな場所を。
 ◆居場所、ですよね。障害者自立支援法は「働ける人は働きなさい」といいますが、精神障害者が働ける環境を整えた企業はほとんどない。重度、就労が困難な人はどんどんみじめになる。その人たちに居場所を作りたいんです。
 労働はします。金に換算してもたいした額にはならないんでが、労働することは生きる意欲につながります。無理やり働けというのではなく、居心地のいい空間で、いきいきとした表情を作ることが本当の「社会参加」ではないでしょうか。
 ――精神障害者の中には病気を受け入れない人も多いのでは。
 ◆背景も家庭環境も一人一人違う。「こうすれば治る」という答えはないんです。信頼関係を作って、手探りで一緒に考えていく中にしか、答えは見つからないと思います。できるのは「ちょっと良くなろう」ということくらいです。幻聴を無くすのではなくて、幻聴と共に生きていこうねって。
 良くなった仲間も何人かいますが、その人の力、僕達の支え、医療の支えなど、いろんな要素が重なりあったからで……。もがくしかないんですよ。
 ――名前を公表することに抵抗はないですか。
 ◆写真を載せて実名を出さないと、社会は信用しませんよ。僕は広告塔でいいんです。熊本で最初に実名を出したのだから責任がある。ただ、僕ももうすぐ50歳。次の世代を育てる責任はあるかなと思ってます。

 ◇プロフィル
 57年12月生まれ。78年、大学入学直後に統合失調症を発症。91年まで12回入退院を繰り返す。94年、統合失調症の仲間と当事者グループ「仲間会りんどう」を結成。03年、県精神障害者団体連合会を発足。05年、NPO全国精神障害ネットワーク協議会の発足に関わり、現在代表を務める。熊本市内で愛猫のリリー(8カ月)と暮す。
毎日新聞) - 5月14日17時2分更新

小児成育医療:心のケア重視、県立医大病院で本格化へ 相談所と外来設ける /和歌山

 ◇和歌山市から受託、連携
 子どもの心のケアを重視した小児成育医療が、県立医大病院(和歌山市紀三井寺)で、近く本格的に始まる。和歌山市の委託を受け、小児科に、週2回相談を受ける医療支援室と診療に当たる外来を設けた。市保健所によると、地元自治体と大学病院が連携し、子どもの心の診療に取り組むのは珍しい。専門医の育成も併せて進め、厚生労働省は「子どもの心の診療医の確保は全国共通の課題。医師の育成も視野に入れた取り組みは重要」と注目している。
 13日午後2時から同病院で記念講座を開き、関係者が虐待や不登校など心のケアの必要性について講演。支援室なども公開する。
 医師3人、臨床心理士1人、ソーシャルワーカー2人の計6人体制を予定。虐待などでは、家族を含めたケアも視野に入れている。市保健所は、子どもの心のケアがより求められている現状を踏まえ、「これまで相談の段階でとどまることが多かったが、実際の専門的な診療に結びつけられる」と期待する。
 支援室副室長の柳川敏彦・同医大保健看護学部教授は「用意した看板に集まってもらうのでなく、県民、市民のニーズを把握しながら、方向性を考えたい」と説明。また、医師の育成については「小児心身症の専門家を育てるのと、すべての小児科や精神科の医師に、専門分野への関心をもってもらうことを目指したい」と話した。
 さらに、心のケアに取り組む他の関係機関などとも「互いに協力できれば」としている。
 講座の問い合わせは県立医大総務課企画室(073・447・2300)。【最上聡】
毎日新聞) - 5月13日17時2分更新

自殺めぐる相談、7割「あり」=メンタルヘルス対策に苦慮−産業医アンケート

企業で働く産業医の7割が、従業員から自殺をうかがわせる相談を受けていることが、産業医科大の中野英樹助手らのアンケート調査で分かった。多くの事業所はメンタルヘルス対策に苦慮しているという。福岡市で開かれた日本精神神経学会で13日、発表された。 
時事通信) - 5月13日16時1分更新



管理人。