心に関する記事

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躁うつ病モデルマウス作製、ミトコンドリア機能障害仮説利用

〜リチウムで改善、理研加藤氏ら〜

  理化学研究所脳科学総合研究センターの加藤忠史チームリーダー、笠原和起研究員らは、名古屋大学と共同で、躁うつ病とよく似た症状を示す実験マウスを作製した。独自の仮説に基づき、成長とともに脳内のミトコンドリアに機能障害が蓄積する遺伝子の改変をすると、うつ状態の行動量が極端に減る様子、特定薬剤の影響による症状の増悪などが見られた。科学的根拠に基づく初めての躁うつ病実験マウスになる可能性がある。米学術雑誌『モレキュラー・サイキアトリー』に4月18日、掲載された。

  躁状態うつ状態を繰り返す躁うつ病は、日本人で約1%程度いると見積もられている。原因は決定的でなく、セロトニンなどの神経伝達物質の不安定さが指摘されるのみで、治療もリチウムなど副作用が懸念される薬物しかない。加藤チームリーダーらは今回、躁うつ病の原因を遺伝子レベルで探った。独自のミトコンドリア機能障害仮説に基づく躁うつ病実験マウスの作製で、これを確かめた。

  実験では、ミトコンドリア機能異常が脳のみで発現する特殊な遺伝子改変を行い、生後マウスの行動を60週齢まで観察した。特に、ミトコンドリアDNA合成酵素を操作し、成長とともに脳内のミトコンドリア異常が蓄積する仕組みを構築した。“輪回し”というマウスが自発的に取り組む行動を指標にした結果、遺伝子改変マウスは行動量が極端に減ったほか、通常、眠る時間になっても輪回しし続けるといった不眠様の状態が認められた。

  さらに、躁うつ病患者への投与で症状の増悪が見られる三環系抗うつ薬を与えると、ヒトと同様な行動異常の増悪が見られた。遺伝子改変されたメスのマウスでは、性周期に伴う行動異常などホルモンバランスの影響を受けやすいといった症状も確認されたという。

  この成果は、加藤チームリーダーらのミトコンドリア機能障害が躁うつ病の発症を促す基盤になるという仮説を支持する。学界などで支持されれば、躁うつ病創薬スクリーニングおよび動物モデルなどで活用される可能性も高い。同氏は「どのようなミトコンドリアの異常が躁うつと相関するのかを詳細に調べることが今後のポイントになる」と述べている。
知財情報局) 

引きこもる若者 親はどうする 〜施設の事件 全国に衝撃〜

 引きこもりの若者らの更生支援施設「アイ・メンタルスクール」(名古屋市杉浦昌子代表理事)で先月、東京都世田谷区の無職男性(26)が死亡し、杉浦代表理事ら八人が逮捕監禁致死容疑で逮捕された事件は、全国の関係者に衝撃を与えた。引きこもる若者は全国で百万人以上とされる。今回のような悲劇を起こさないために、親はどう行動すればいいのだろうか。 (酒井ゆり、安藤明夫)

 引きこもる若者の中には、家族への暴力やアルコール・薬物などの問題を抱える場合もある。疲れ果てた家族がわらにすがる思いで、頼る先が民間施設。しかし、本人の意思を無視して支援を始めると、今回のような力ずくの収容、身体拘束といった危険を生む恐れがある。

 引きこもりに詳しい精神科医斎藤環さんは、暴力を伴う引きこもりへの対応として施設入所よりも「警察への通報」と「親自身の避難」を勧める。

 本人が暴力をふるった直後などに警察に通報すれば、暴力を許さないという家族の意思が伝わり、本人の罪悪感が目覚める。

 また、暴力が進行して手に負えない場合は、逃げること。その際には電話で子どもと連絡を取り「暴力が収まれば必ず家に戻る」と伝えることが大事だと言う。

 この分野の専用施設は全国に約五十あるが、公的助成がなく、行政の監督権限もないため、運営方針や専門性などのばらつきは大きい。

 引きこもりやニートの支援に取り組むNPO「育て上げ」ネット(東京都)の工藤啓理事長は、施設選びのポイントとして▽本人の希望を尊重する▽個人のスペースがある−を挙げた。

 「入所する場合は通常、事前に説明を受け、見学・体験、入所の手順を踏む。本人の希望を最大限尊重するのが本来の姿。また、密接な人間関係を築くには、大部屋の効果もあるが、人間関係を築くことが苦手な若者が多いので、個人スペースを適切に確保するのが最低条件」という。

 また、本人や家族はさまざまな悩み、課題を抱えているため「問題を整理し、必要な情報を提供できる相談機関の充実が不可欠」と強調した。

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 引きこもりといっても、抱える問題は多様だ。

 「全国引きこもりKHJ親の会」(事務局・さいたま市奥山雅久理事長)によれば、引きこもる若者の多くは「人前で恥をかくことが怖い」といった社会不安障害を抱えている。また、発達障害の子どもが、周囲の無理解から不登校になり、その延長として引きこもっているケースもみられる。

 支援には、多くの専門家が必要だ。厚生労働省は二〇〇三年、引きこもりの対応ガイドラインを作成。親や関係者が地域の精神保健福祉センター、保健所などに相談し、早期解決できる仕組みづくりを目指しているが、奥山理事長は「ガイドラインを作っても、きちんと運営できなければ意味がない。民間任せにせず国を挙げて専門家育成を」として、次の四点を要望している。

 <1>新世代抗うつ剤のSSRIが社会不安障害にも有効として保険で使えるようになったので、SSRIを扱える専門医の研修指導を。

 <2>認知行動療法(自分の考えや行動の癖を知り、変えていく手法)をできるカウンセラー、セラピストを養成し、健康保険適用を。

 <3>会が取り組んでいる「引きこもり訪問サポート士」の養成に支援を。

 <4>専用施設の充実と専門性向上のために公的な助成を。

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 「戸塚ヨット事件」の時代とは違い、個々の若者へのきめ細かな対応を、多くの専門家、家族が努力している。“特効薬”を装ったスパルタ主義に惑わされず、社会の動きを把握して仲間をつくっていくことが大切といえる。
東京新聞

精神科5年で1・5倍 クリニック都心部に続々 理解深まり敷居低く 札幌

 道内各地で医療過疎がすすむ中、うつ病など「心の病」の治療にあたる精神科や心療内科神経科のクリニック(診療所)が札幌市内で増えている。このうち精神科は過去五年間で一・五倍にもなり、大通など中心部での開業が目立つ。「心の病」への理解が深まり、精神科の敷居が低くなったことが潜在的な患者を呼び、クリニックの増加につながっているとみられる。

 市保健所によると、精神科クリニックの届け出件数は現在六十三件。届け出は心療内科が五年前の一・九倍の四十七件、神経科は同一・三倍の四十九件。小児科、産科などはいずれも減少しており、精神科系の増加が著しい。精神科医の一人は「大通には百メートルに一軒はある」とラッシュぶりを表現する。この傾向は道内でも札幌のみで、各保健所は「地方の医師不足は精神科も例外ではない」と口をそろえる。

 札幌市内で続々と誕生する精神科クリニックの共通点は、駅に近くビルの二階以上にある点。以前は郊外のクリニックが多く、通院すると人目が気になったが、最近の「都市型」は人目につきにくく、通勤途中に気軽に立ち寄ることもできる。

 治療方法も時代を映している。「さっぽろ駅前クリニック」(中央区北三西三)は、昨年九月にオープン。患者が自らの体験を即興で演じる「サイコドラマ」を行う。開業時から予約は満杯で、横山太範(もとのり)院長は「都市型クリニックはまだ増える」と予想する。

 七年前に開設した「ほっとステーション」(中央区大通西五)は、「都市型」の草分け的存在。ホームページ(HP)制作などの作業所と連携し病気で退職した患者の再就職をサポートする。精神保健福祉士の中村慎一さんは「病気を治すだけでなく、復職、再就職に向けたサポートが重要」と話す。

 全国的にみても精神科クリニックは増加傾向にあるが、大都市に集中している。厚労省は「うつ病の認知が高まり、精神科を受診しやすくなったほか、病院の精神科救急などを避け、開業する医師が増えていることも原因では」と分析している。
北海道新聞

学校全体で支援を 高校中退者対策協議会

 中途退学者対策担当者連絡協議会が16日、沖縄市の県立総合教育センターで行われ、県立高校の担当者が参加した。中途退学者が減少した各学校の取り組みを発表。「中退係」の担当者一人だけで問題を抱え込まず、学校全体で生徒を支援する組織づくりの必要性が強調された。さらに、リストカットを繰り返したり、心因性の疾患を持つ生徒への指導の難しさが今後の課題として挙げられた。

 北部工業高校で中退係を担当する池原喜哲教諭は、担任や学年会、学科と連携しながら取り組んだ結果、2005年度の中退者は前年度の19人から15人に減少したことを報告した。池原教諭は「中退係とカウンセラー任せではなく、全職員がかかわる指導体制づくりが必要」と話した。同校には自己否定感が強い生徒が多いと分析し、「生徒は自己肯定してくれる先生を探している」と生徒、教師間の信頼関係が大切だと強調した。
 北中城高校の真玉橋元博教諭は、05年度からティーチングサポートを導入し、中退者だけでなく無届け欠席・欠課の減少にもつながったと評価した。ティーチングサポート導入で、別室登校の場所を確保し、カウンセラーが常勤するようになり、学級担任と生徒指導部勤怠係、養護教諭が連携するシステムがうまく機能したと報告した。真玉橋教諭は「ティーチングサポートは効果が大きいだけに、なくなった後の不安もある」と振り返り、行政側により多くの学校での導入が必要だと指摘した。
 20004年度の県内の公立・私立合わせた高校生の中退者は1008人で、中退率は1・8%だった。前年度の2%から改善し、全国平均の2・1%を下回った。全国では18位の少なさ。02年度は全国ワースト2だった。
琉球新報) - 5月19日10時0分更新

存在認める雰囲気を 性同一性障害児 主治医の一問一答

 女児として播磨地域の小学校に通う性同一性障害GID)の男児(7つ)を診察している大阪医科大学付属病院精神神経科大阪府高槻市)の康(こう)純(じゅん)医師が十八日までに、神戸新聞社の取材に応じた。康医師は昨年二月、男児と初めて対面。以来、男児の長期休暇などに診察を続けているといい、「社会は子どもが自分の思いを打ち明けたときに受け止めてあげるべき」と理解を呼びかけた。康医師との一問一答は次の通り。(霍見真一郎)

 -男児が六歳という非常に幼いとき、診断書を書いた

 「こんなに幼いケースは初めてだった。保育園の年中組から年長組にかけて、首尾一貫して自分は女だと主張しており、少なくとも二年以上にわたって性自認男児の心の性)が変わっていないことなどから、GIDと診断した。しかし子どものGIDは成人になって体の性に戻る可能性もあり、今後どう変わっていくかは別問題だ」

 -子どものGIDの問題点は

 「性自認は自我の大きな要素。親や学校に押さえ込まれて成長すると、自分が生きていくことの価値が見いだせなくなり、自傷行為や自殺などにつながる可能性がある」

 -学校の受け入れで、教員に必要なことは

 「きちんとした知識を持つこと。生徒が打ち明けてきたときには、まず受け入れてほしい。対応に迷ったなら、医師の意見を聞いてほしい」

 -教育行政に何を求めるか

 「世の中には、GID患者が必ず一定の割合でいる。おちんちんが付いている女の子がいてもいい、という雰囲気をつくっていくことが大切。GIDの子どもへの対応策を定めるべきだ。今後、専門家の意見を聞き、そういった子どもを受け止める体制づくりを進めてほしい」
神戸新聞



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